お値段以上。のリペア

気品漂う奥様と破壊された椅子のギャップ
木製の椅子をお預かりに、幕張のお宅へ訪問。
素敵に年齢を重ねられた奥様が、玄関先へやっとの思いで運んでこられたのがこの椅子。このお方がどうやったらこの頑丈な椅子をこんな目に…と一瞬目を疑ってしまいました。
「買い替えた方が安いのでは…」
リペア屋のわたしの立場でも、ふとそんな言葉が頭をよぎります。
名もなき木製椅子のリペアは、費用に見合うのだろうか?
でも、この椅子が直る期待感に目をキラキラさせる奥様を前に、そんな思いは一瞬でリペアへの使命感に変わっていったのです。
リペアしながら想像する椅子の思い
リペアを始めて間もないその時のわたしにとって、この作業はまるで難攻不落の城壁でした。
接合部分はなかなか上手くくっつかず、ようやく固定出来てもヒビの跡が消えず…
実質二日間かけてひたすらこの椅子と対峙している間、その背景にある物語を想像していました。
あの家にやってきた日に、ご主人を座らせた時の誇らしさ
お孫さんが初めて、大人の椅子に座った時のわくわく
娘さんの彼氏が家に挨拶に来た時はドキドキしたな
きっとこの椅子は、ご家族にとってかけがえの無いパートナーなのでしょう。
そしてまた新たな物語が
ようやくリペアが完了し納品にお邪魔した時には、わたしもすっかり彼に愛着を感じていました。
蘇った椅子を見て小躍りする奥様と、少し照れくさそうに見えた椅子を前に、
わたしのリペアも彼らの物語の1ページに刻まれたのかな、とちょっと誇りに思うのでした。

千葉県 幕張市
二日間 12,000円
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